続・概算力 〜ディレクターの剣

概算力がディレクターにとって大切という話の続き。

なんの続きかわからない人は前回のブログ「概算力」を読んでください。
あるショップでの概算にまつわる残念なできごとがまとめられています。


何故ディレクターという職種にこそ概算力が大事といったか、その理由を大きく2つに分けて説明する。
ディレクションという業務の性格上、この2つの認識を常々持っていることが非常に大事で、どちらかが欠けても偏重してもイマイチなディレクターとなってしまうだろう。




クライアントにとってディレクターは専門家

フロントに営業がいようがいまいが関係ない。
クライアントが概算を尋ねてきたら、それはその道のプロと認識されている。
もしあなたが金額を尋ねるとしたら、全くその筋とは関係ない人に聞いたりはしないはずだ。

ディレクターはデザイナーでもなければプログラマーでもない。特別な専門技術がない誰にでもできる職種だと思われがちである。ディレクターと話していると「手に職がない」などと言う人が実に多い。
しかし、聞かれている時点で相手に頼られているし、少なくともその筋のプロだと認識されている。プロ意識が希薄なままでクライアントの前に立つなんてむしろ失礼なので改めた方がいい。

概算を求める相手の期待に応えるためには、できるだけ正確な数字が必要になる。
バッファを読んで高く出し過ぎても、相手を喜ばせようとして低くめに出しても良くない。

例えば、概算で500万と伝えたのに、正式な見積もりでは300万になったとする。下がったからいいじゃないかという話ではない。予算を超えないのは大事だが、下がり過ぎるのも具合が悪い。どういう計算をしたら読みが200万も狂うのか?即信頼をなくす。

逆に300万と伝えたのに、最終的に500万になったとする。もはや次の発注は危ういだろう。

概算という言葉に騙されてはいけない。これは経験則でしかないが、そして金額が大きくなればなるほどその%は低くなるが、イメージ的に許されるゆれは10〜20%程度だろう。しかも超過は好まれない。
具体的な数字が出ればイメージがつきやすいと思うので先ほどの例を挙げるが、概算で300万と出したら、正式な見積もりでは250万〜300万でおさまるのが理想である。

クライアントから信頼を獲得しているディレクターはこれができているものだ。




専門家にとってディレクターはクライアント

概算とは、作業に対して自分がどのくらいの時間をかければできるかの見積もり、それを金額に換算したものである。

ディレクターは1人で仕事をすることは少ない。プロジェクトでは専門職のメンバーをとりまとめて動かす。つまり、自分だけでなく関わる人の仕事の見積もりをしなければならない。概算力を高めることは相手の仕事の能力を知ることにもなる。

よくプログラマは人月で見積もりが出てくる。1人月80万などといった数字がそれだ。
この人月というのは、まず時間単価を設定し、それに1ヶ月の稼働時間を掛け合わせて算出されたものである。尚、1ヶ月の稼働時間は20日×8時間で160時間とされる。
【1日8時間×5日間(1週間の実働)×4週間(1ヶ月は4週という前提)=160時間】

仮に時間単価が5,000円であれば、1日あたり4万円、1ヶ月で80万円になる計算。

時間単価はその人のスキルによって設定されるが、設定の仕方やスキルの査定は会社によって違う。なので、一概に80万円で高いかどうかはわからない。同じものを作るのに1ヶ月かかる人と2ヶ月かかる人では、単純に単価が倍になっても結果は同じになる。

そのあたりの能力の見極めもしていかないと見積もりはできない。
出てきた見積もりが高いか低いかの査定もできない。

ややこしいことに単価の高い低いは能力だけで決まらない。
会社の規模や業態により、直接費に諸々間接費も加わり工数単価が決まる。
例えば、オフィスの賃料や複合機のリース料など、当該案件の直接的な原価でないものも工数単価にはね返ってきたりするものだ。

わかり易いのでプログラマーの例を挙げたが、それ以外の職種も人件費に関わる見積もりはだいたい工数から計算されているので大枠変わらない。
社内、社外は関係なく、こういった事情も把握した上で、この案件をお願いしたらいくらかかるかを大外し無く計算できるようになれば一人前である。

これができるようになれば、専門家達からの信頼を勝ち取れる。冒頭にも書いた通りディレクターは1人で仕事をすることがほとんどない。周りに囲まれる人達に頼られる存在になるためにも概算力を高めるべきであることがわかる。




概算力を磨くにはどうすればいいか?

それは経験を積むしかない。WEBだろうが、紙だろうが、アウトプットはなんにせよ。
出てきた金額をただ横流しにするのではなく、金額の詳細を確認して、何にいくらかかかるのか、理屈を踏まえて確認していくことが大事だ。質問を受けると面倒くさそうに応える専門家もいるが怯んでは成長できない。

ディレクターの剣である概算力を磨くことで付随して高まる能力がある。
これについてはまた次回のディレクター講座にて。